スキゾイド雑記帳

人間害悪・人間リスクについての考察

ヨネカワさんとの2年間~中編~

別館『スキゾイドパーソナリティ障害の生存競争』も更新中です。 http://schizoid.hatenablog.jp/


「先生、何かの冗談ですよね?これからは仲良くする?謝りなさい?そんなことする必要がどこにあるんでしょうか。ユウヤ君は今のビデオでわかったように、ダイシ君を一方的にいじめて暴力まで振るってきた人間です。こんな人間、いい子になるわけがないでしょう?先生は自分のお子さんがユウヤ君にいじめられたらどう思います?ユウヤ君を殺したいと思いませんか?ユウヤ君がやったことは、謝って償うものではなく、死んで償うものだと思います。違いますか?」

先生は困った顔をしていた。ヨネカワさんの発言は実際に正しかったし、ユウヤ君と仲良くしたい人なんてこのクラスに誰一人としていないだろうなというのが先生にもわかっていたからかもしれない。それだけユウヤ君やその取り巻きはこれまで調子に乗って学年全体にマウンティングを繰り返していたのだ。

翌日、ヨネカワさんが校長室に入るのを私は見た。その日の午後、担任教員とユウヤ君が校長室から出てくるのを見た。

ユウヤ君は教室に入りヨネカワさんを睨んでいた。同時に、ヨネカワさんに対してただならぬ恐怖心を持っているようにも見えた。その日からダイシ君に対するいじめはほぼなくなった。

数か月が経過し、ダイシ君がいじめられるようになってから1年が経過した。この騒ぎは沈静化し、教室内でも特定の誰かがいじめられるような空気がなくなっていた。しかし、下校途中や体育の授業後の更衣室などではやはりまたダイシ君に対するいじめが起こっていた。ダイシ君は幸いにもそのことを私やヨネカワさんに相談してくれた。

驚くことにヨネカワさんは事態が鎮静化していた時期にも、ユウヤ君たちの行動を監視し、彼らが特定の弱い者いじめを企てていることやダイシ君に対して仕返しまがいの嫌がらせを計画していることなどの証拠を全部とっていた。改めてヨネカワさんの用意周到な行動に感心すると同時に、少し恐ろしくなってしまった。

とはいえ、ヨネカワさんは決して無害の他人に攻撃を仕掛けることもないし、そもそも人の悪口などには一切乗らない人だ。だから不誠実や侵略攻撃をしない限り、この人から制裁を受けることはまずないという安心感がったから、関わることができたのかもしれない。私達の関わり方も、相変わらず学校生活を無難に切り抜けるパートナーくらいのものだったし、レコーダーを借りて以来、家に遊びに行くこともなかった。

ヨネカワさんは更衣室前の廊下に監視カメラを設置し、ユウヤ君たちがダイシ君の後をつけていく様子を日々撮り続けた。そしてダイシ君にわざと大きな声で「やめてよ」と叫ぶように指示した。ダイシ君が大きな声で抵抗すると、それに呼応するようにユウヤ君たちの挑発も大きな声になっていたのだ。

こうして証拠集めを続けた。幸いにも以前のように派手な暴力などにはなっておらず、ダイシ君の精神状態さえ維持することができればなんてことはないと判断できるほどだった。今思えばそんな判断も危険ではあったのだが、確実にユウヤ君たちを追い込むための証拠が集まった。

ヨネカワさんは今度は一切学校側に相談しなかった。教師やクラスメイトにも語り掛けることはなかった。その代わり、ユウヤ君たちが嫌がらせやいじめを繰り返す様子を大量のDVDやCDに記録し、撮影した彼らの悪さを大量のチラシとして印刷していた。

ある日、私は再びヨネカワさんの自宅に招かれた。

「これなんだけど、商店街で配布しない?あと、全校生徒の自宅に送るのはどうかな?あいつらって中学受験もするよね?だったら志望校も調べてそこにも送っちゃおうよ。」

私はヨネカワさんが本気だとわかった。ヨネカワさんはユウヤ君たちのことを絶対に許すつもりはないのだと確信した。協力してほしいと真顔で言われ、快諾すると、ヨネカワさんは私にだけ見せてくれる優しい笑顔に戻っていた。

私達はまず全校生徒の自宅にチラシを送った。郵送は面倒だったので、一軒一軒回ってポスティングした。当然、翌日の学校は大混乱になった。ユウヤ君たちは全校生徒から侮蔑の表情を向けられることとなり、これまで彼らがいじめてきた何人もの人たちが彼らを汚いものを見るような目で見ていた。

ユウヤ君たちと目が合った。最初の教室内でのビデオ上映会の時のような大きな態度はそこには残っておらず、ただひたすら絶望と恐怖に満ちていた。この時、彼らはまだこれが商店街に配布されることを知らなかった。当時はインターネットもツイッターも未発達だったので、これがアナログ版の晒し上げ行為だった。しかし、ヒロユキ君はこれまでの自信に満ちた偉そうな表情が想像できないくらいに青ざめており、もうあとは先生に助けを求めるしかないことを十分に把握しているようだった。

「校長を抑えておいたのは、このためだったんだよね。ここで彼らが教師に一方的に被害者ぶって泣き付いたら、私達が悪くなるでしょ?それを防ぐために目に見える証拠を予め出しておいたっていうわけ。」

彼らは職員室に今にも発狂しそうな恐怖心と混乱の表情を浮かべながら駆け込んでいった。階段を上るその動作さえも今にも倒れそうな様相だったのを覚えている。