スキゾイド雑記帳

人間害悪・人間リスクについての考察

ヨネカワさんとの2年間~前編~

別館『スキゾイドパーソナリティ障害の生存競争』も更新中です。 http://schizoid.hatenablog.jp/


※この話はフィクションです

 

小学校5年生の時、ヨネカワさんはやってきた。ヨネカワさんがどこからきたのかはわからなかったし、転校生だったのか、それともクラスが今までずっと違っただけなのかわからない。ただ、私とヨネカワさんは友達になった。

友達になったと言っても、別にベタベタと仲良くするわけではない。移動教室を共にしたり、昼食を食べたりするくらいだ。放課後に遊んだこともなかった。

夏前になると、転校生がやってきた。ダイシ君という子だった。ダイシ君は少し貧乏な家の子で、親の職業が不況によって頻繁に変わっているような話を耳にすることがあった。私のいたクラスはとにかく排他的で、人の悪いところを探しては責めたり、からかったり、仲間外れにしたりという最悪な環境だった。私もこれまで授業中に発言するのを冷やかされたり、変なあだ名で呼ばれたり、色々とあった。

ダイシ君は粋がっているクソガキ連中に次第に馬鹿にされたり暴力を振るわれるようになった。軽く蹴りを入れられるとかそういうものだったのだが、次第に顔をつねったりと酷いものになった。何度か止めに入ったものの、結局、教師がいない場所ではそういう小さな虐待行為が続いていた。

私とヨネカワさんは、群れて行動するのが嫌いだったので、転校生など輪からこぼれた人には友好的に接していた。ダイシ君に何度も心配の声をかけたが、彼は大丈夫だと笑うだけだった。しかしそれは明らかに苦笑いだった。

ある日、夜にヨネカワさんから電話がかかってきた。急に電話をしてくるなんて珍しいなと思いながらも出たのが金曜日。用件は「明日、うちに来ない?」の1つだけだった。

翌日、ヨネカワさんの家にお邪魔した。家族はいないようだった。仕事に出かけていたらしい。家は分譲マンションで、そこそこ裕福な家なのだろうなと感じた。家族が荒れている様子などはなかった。

「昨日、お父さんにこれをもらったんだけど、これを使ってダイシ君を助けようと思う。興味あったら一緒にやらない?」

出したのはカセットテープのレコーダーとデジタルビデオカメラだった。お父さんがカメラとかが好きで、新しく買ったので古いのをヨネカワさんにくれたらしい。これでダイシ君が攻撃されている証拠を取りだめて行こうというのだ。ダイシ君と私達は普段からも仲良くしていたし、何よりいじめは許せなかったので、私もその話に乗ることにした。私はビデオカメラを担当することになった。

翌日、いつものようにダイシ君の周りをクソガキたちが囲んだ。そのボスはユウヤ君だ。ユウヤ君はダイシ君をからかいながら、頭を叩く等している。私達は近くで見守りつつも、ダイシ君が何とかやり過ごせている間は、記録を回し続けた。幸いにもその週は学校行事が多く、教員や保護者の目が常にあったので、被害は朝のホームルーム前だけにとどまった。

翌週、こうした日程が終わると、授業中のダイシ君の発言に対する揶揄や、休み時間のイビリ、掃除の押し付けなどがはじまった。ヨネカワさんはユウヤ君を中心とした連中のことをじっと見ていた。放課後もこうしたダイシ君イビリが続いていた。ユウヤ君はヨネカワさんに気づき、吠えるように話しかける。

「何見てんだよ」

粋がるユウヤ君に対し、ヨネカワさんは突然水筒に入った熱湯をぶちまけた。ユウヤ君はパニックになりその場から逃げ出した。

翌朝、ユウヤ君はとても起こった様子でヨネカワさんに近づき、興奮気味に「昨日はよくもやってくれたな」と怒鳴る。

ヨネカワさんは教壇に立った。「みんなおはよう!今日はとても面白いビデオを撮ったから、みんなに見せたいんだけど、いいかな?」と笑顔で話す。

ヨネカワさんはこうやって平然と人前で話ができるタイプだった。友達付き合いをしないのでクラスで浮いた存在に思われるが、成績が抜群によかったので一目置かれていたことは確かだった。

そしてヨネカワさんは私と一緒に記録したこれまでの音声や映像を流して満面の笑みでメガホン越しに語りだした。

「みんな、これユウヤ君がこれまでにダイシ君に対してしてきたことと、ユウヤ君が偉そうに陰でみんなのことを馬鹿にしていることの証拠ね。ユウヤ君のやっていることって犯罪だと思わない?こんな人、死刑にしちゃっていいよね?ね?」

ユウヤ君がヨネカワさんに飛び掛かった。顔は真っ赤で、今にも泣きそうになっている。ヨネカワさんはその様子までもをビデオカメラに撮ろうとしてビデオカメラをユウヤ君の前に突き出すと、ユウヤ君はその場で静止してしまった。

ヨネカワさんに何もできないと思ったユウヤ君は、私の方に向かってきた。「お前も一緒になってやってたんだよな。調子乗ってんじゃねえよ。」ユウヤ君から一発殴られた。実は私は3年生の時にユウヤ君にことあるごとにいびられていた。それを思い出してしまい、なぜか腹が立ってきた。私を殴って満足気味に背を向けて自席に戻ろうとするユウヤ君の背中に向かって何もすることができなかった。

昼休み、ユウヤ君は綱渡り遊具で遊んでいた。私が通りかかると、「死ね」といって唾を吐いてきたのだ。朝から色々なことがあり、さすがに腹が立った。その後の記憶は確かではなかったが、気づくとユウヤ君は遊具から落下して水たまりに尻餅をつき、口から泥水を吹きながら泣いていた。どうやら私がキレてロープを大きくゆすりユウヤ君を転落させたらしかった。大した高さではなかったので尻餅だけに終わったが、さすがにこれについては先生が間に入ってしまい、そこそこの大事になった。

ユウヤ君はここ数日でクラスで一番強い自分に逆らう人間が現れたことに動揺している様子だった。そしてそれがダイシ君への当たりを強くするきっかけになってしまった。ユウヤ君は仲間を引き連れてダイシ君を毎日のようにいじめるようになった。しかし、これがヨネカワさんの狙いだったのだ。

ダイシ君も精神的なつらさはあったものの、私やヨネカワさんが背後で仕返しをしてくれることを信じていたので、そこそこ毎日のイビリに耐えていた。さすがに危険な目や怪我をさせるわけにはいかないので、その辺は私が注視してみていたが、証拠が加速度的に増えていった。

ある日のホームルームで、ヨネカワさんが突然立ち上がった。

「このクラスにはいじめがあります。ダイシ君に対してユウヤ君、タカヒロ君、ヒロユキ君などが毎日のように暴力をふるったり、悪口を言ったりしています。今からそれらを全部映像で見せたいと思います。」

その映像には何月何日加害者○○と全部に見出しがつけられ、もはやクソガキ連中は言い逃れできない状況になっていた。

「だ…だって…ダイシが最初生意気だったから…」と言い訳するユウヤ君、ユウヤ君に命令されただけだというタカヒロ君たち、その瞬間、先生の怒鳴り声が聞こえてきた。

30分間、いじめの実態把握と加害者への説教、傍観者への注意が続いた。その日はダイシ君は保健室で保護されることになったが、実際のところ、ダイシ君はそこまで傷ついていなかった。なぜなら、一人でも自分の味方がいると知っていたからだ。

しかし、最後に教員が放った言葉は信じられないものだった。

「さあ、ユウヤ君たち、きちんとダイシ君に今日までのことを謝りなさい。そしてこれからは仲良くすること。いいね?」

はい!という面白くなさそうな返事が重なる。そこにヨネカワさんの衝撃の発言が放たれた。